秋
彼に出逢う前の季節は秋だった。 北の地の気温が下がるのは早い。 寒くなって、心細くて、誰もいない暗い部屋に電気を点けて入るも冷え切っていて。 その秋、私は孤独を感じていて、 なんでもない少し切なめのメロディーの曲を聞くだけで、涙を流していた。 ああそういえば、彼とは秋を一度しか越えられなかったのか。 なんて短いの。 その時も今と同じように周りは恋に浮かれた人が大勢いて。 私の負のオーラがそれを感じ取って、一層孤独を引き立たせていたのだと思う。 桃色の綺麗な桜だったのに散っていく枯れ葉。 やけに金木犀の色が目に痛い。夕日色で、切ない。 クラシックギターの音も、女の子の笑い声も、何もかもが悲しくなる。 近いものが遠くに感じて、生きているかどうかわからなくなる。 心に制御がつかなくなっている。 心がちゃんと機能していない。 何もかも過敏に反応するだけ疲れるのは私なのに。 秋に失恋はするもんじゃない。 |